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「じゃ、善は急げだ。いまからナッちゃんのところまでついてきてくれる?」
 絹代や亜央の好反応に力を得たのか、荘吾がそう切り出す。美依がナツキとの合流を了承していないことなど忘れ去られているようだ。なんとかして時間を稼ごうと口を開きかけたが、またしても絹代に先を越されてしまった。
「うん、行こ行こ。この近く?」
「いや……」
 荘吾は足元に放られていたデイパックから地図を引っ張り出し、お菓子たちの上に広げた。エリアにするとB=9、キャンプ場と書かれたあたりを、細長い中指ではじく。
「ここだ。ちっと遠いかな」
「うっそ、真反対じゃん!」
 絹代が露骨にげんなりするのも無理はなかった。キャンプ場はこの老人ホームから最も離れた場所に位置しているのだ。直線距離にしてみれば1.5km程度のものだろうが、これまで歩き通しだった彼女たちにとって、そこは無限の彼方と言っても過言ではないだろう。
「ああもう、それ知っただけで動く気なくなった。足痛い。おなかすいた」
「そりゃ困ったな」
 頭をがりがりと掻く荘吾を見ながら、美依はガッツポーズをとりたい誘惑と戦っていた。これはチャンスだ。考えていたよりもずっと早く、この煩わしいキツネ男から自由になれるかもしれない。荘吾が美依から離れざるを得ない状況に、うまくいけば持っていけそうだ。
「ごめんけど……」美依は申し訳なさそうな声音を作った。「あたしもあんまり体力残ってないかも……。亜央ちゃんも、目の下にくまできてるし」
 いきなり名指しされた亜央はきょとんとして、涙袋のあたりを指で押さえた。美依は人為的にやつれを表そうと目を伏せ、頬に睫毛の影を落とした。
「たしかに3人ともお疲れのご様子だな。かわいい顔が台無しだ」
 恥ずかしげもなくそんなお世辞を吐きながら、荘吾は腕を組んだ。
 ここで出しゃばりすぎると狙いを読まれかねないため、希望のセリフに荘吾が行き着いてくれることを期待した。女の子たちは心身ともに困憊状態、加えて、集合場所にナツキが戻るまでの時間が差し迫っているとくれば、心配せずともおのずと良策が導き出されるだろう。
「あっちのほうが隠れ家としては出来がいいんだけどな」荘吾はひとつ唸ったのち、存外あっさりと提案した。「わかった。ナッちゃんをこっちに連れてこよう。寂しいが、俺ひとりっきりでナッちゃんを迎えにいくよ」
 美依は心の中で荘吾に色とりどりの紙吹雪を降らせた。荘吾の物分りのよさを、今回ばかりは素直に賞賛したくなった。
「ごめんね、湯浅」
 感謝の意を述べたいところだったが、あくまで荘吾を気遣うふりに徹する。
「しかたないしかたない」荘吾は破顔した。「疲れてるとこを連れ回して、はい何かありましたじゃ取り返しつかないからな。お三方は心ゆくまで休憩して、次に備えるといい。お昼寝するのもいいかもな」
「湯浅荘吾くんは、体の具合はいかが?」
 亜央が荘吾のつり目をじっと見つめながら、久々に口を開いた。美依のように上辺だけではなく、本心から荘吾を心配しているような視線だ。どうしても“不思議ちゃん”というイメージが先行しがちだが、この中で最も良識的なのは彼女なのかもしれない、と少し思った。
「俺はまだまだ体力残ってるよ。仲間を捜し回ってるっていっても、ずっと働き通しなわけじゃなくてな。ちょくちょく休み入れてるんだ」
 荘吾が答えると、絹代が「なあるほど」と手をたたいた。
「そんなだからあんまり人集められてないんだね」
「そのへんは目をつぶってちょうだいよ」荘吾は苦笑した。「しかしまあ、いくら元気でも腹ごしらえくらいはしといたほうがいいかもしれないな。ちょうどいいわ、高橋ちゃんたちも食う?」
「えっ、なにを?」
 食べ物の話がはじまった途端、絹代は瞳から星を飛ばした。荘吾はそれをおかしそうに眺めながら、デイパックからなにやら取り出した。その手のひらサイズの袋には、隷書体で“しろめし”と印字されている。荘吾が軽く振ってみせると、袋の中からマラカスのような音がした。
「え、それごはんなの?」
「ああ、非常食なんだとさ。お湯か水を注ぐだけであら不思議、おいしいごはんのできあがり。それからこんなのもあるんだな」
 続いて絹代の目前に突き出されたのは、むやみに美味しそうな調理例で飾られた箱――レトルトのカレーだった。
「うわあ……」
 もはや言い尽くすこともできないくらい感動しているのか、絹代はただただため息を漏らすばかりだった。プログラムが開始して以来、政府支給のお粗末なパンやお菓子で飢えを凌いできた彼女にとって、まともな食事はどんなにかありがたいことだろう。かく言う美依も、食べ物を最後に口にしたのは調理実習のことで、そろそろ本格的に空腹を感じてきたところだった。
「学校の近くの店にゃこういうもんが山ほどあってな。キャンプ用品もたんまり置いてあったから、楽したがりのキャンプ客に結構売れてんのかもな。まあ、そのおかげで俺は食うに事欠かないわけだ。しかも、冷たいままでいただこうと思ってたら、ここにはコンロがあるっていうじゃない。やっぱりカレーはあつあつに限るよな」
「あたりまえだよ! うう、ものすっごいおなか減ってきた。もう倒れそう」
「わかったわかった。すぐ作ってあげるから待ってな」
 荘吾はデイパックを肩に提げると、早急に部屋を出ていこうとする。お約束として「手伝おうか?」と腰を浮かせてみたが、「お嬢さんがたはまったりしときな」とウインクされたため、美依は悠々と荘吾の背中を見送ることになった。
「私ね、実は湯浅ってそんなに好きじゃなかったんだよね」
 引き戸が閉まるや否や、絹代が本人不在をいいことにそんなことを打ち明けた。絹代の大声が隣の給湯室へ届きはしないかと冷や冷やしながら、美依はとりあえず会話に参加した。
「なんで?」
「だって、ゴーイングマイウェイなとこあるじゃん。他人のことなんか知ったこっちゃないって感じがして」
「あー……」
 おおむね同意見だった。何かの作業にしても世渡りにしても、荘吾はあらゆることを器用にこなすことができる。特定の友人を作らないのも、助けを必要としていないからなのだろう。自分のこと以外にこだわりがないため、誰とでも気負いなく付き合えるし、さまざまなグループを渡り歩ける。彼が八方美人である所以を美依はそう解釈していた。財官正(男子8番)畠山智宏(男子12番)あたりの堅物には厭われているようだったが、義理人情に薄いその在り方に、美依は少しばかり親近感を抱いていた。
「湯浅荘吾くん、やさしいよ」
 どういうわけか、亜央が身内の悪口を言われたかのようにむっとする。そんな様子に気づかないまま、絹代は小刻みに頷いた。
「そう、そうなんだよ。私、今日はじめて気づいたんだ、湯浅がこんなにいいやつだったって。見直しちゃった。どんな話もにこにこ聞いてくれるし、意外と真面目だし、ごはんはくれるし」
 ごはんが本音で、他は後付かなと思った。なんにしろ、絹代の中で湯浅荘吾株が高騰したことは間違いないようだ。
「お洋服も、作ってくれたよ。マシュマロみたいな、お花畑みたいな、とってもとってもすてきなワンピース」
 相棒に続けとでもいうように、亜央までもが荘吾を褒めはじめた。
 荘吾は三度の飯より裁縫が好きで、持っている服のほとんどが手作りだという話を聞いたことがある。材料費さえ出せば、普段着からコスプレ衣装、有名ブランド品のレプリカに至るまで製作を請け負ってくれるのだという。亜央も依頼人のうちのひとりらしい。その抽象的すぎる説明ではどんなデザインなのか想像できないが、荘吾なら亜央の頭にあるファンシーなイメージを難なく形にしそうだった。そういう経緯があるから、亜央は彼の肩を持つのだろう。とにかく荘吾は、この場ですでに3分の2の支持を獲得していることになる。
「へーっ、いいなあ。着心地はどうだった?」
 絹代から羨望の眼差しを送られた亜央は、幸せそうに顔を和らげた。
「羽みたいで気持ちいいって、言ってたよ」
「え? 言ってた? 誰が?」
「ヨシコ……」
 にわかに亜央の声が沈む。美依はそこで、半日前に起こった些細な事件のことを思い出した。絹代は頭の上に疑問符を浮かべたのち、ひらめいたように亜央を指差した。
「あっ、また出た、謎のヨシコ! 湯浅が作ってくれたやつってもしかして、さっきなくしちゃったっていうヨシコの服?」
「うん……。ドレス、どこにいったのかしら。ポケットの中が息苦しくて、怒って家出したのかしら……」
「たぶん普通に落としたんだよ」絹代はパートナーの理解不能な発言をさらりと流した。「ていうか、ヨシコって誰?」
「お友達。かわいくて、陽気な子なの」
 亜央は内ポケットから写真を大切そうに抜き取り、絹代と美依の間へ差し出した。そこに写っていたのは、この国で育った女の子なら一度は遊んだことがあるであろう、着せ替え人形の代表格“リサちゃん”だった。
「ヨシコっていうか、これリサちゃんじゃん」
 絹代が指摘すると、亜央は眉をひそめた。
「それ、だあれ? ヨシコは、パパに連れられてはじめてお家にきたとき、自分でヨシコですって名乗ったのよ」
「ああ、そう……」
 絹代はこれ以上の正誤を諦めたようだった。
 リサちゃんといえば、髪の色は茶か金で、フリルやリボンのついた洋服を着ているイメージがあったのだが、このヨシコちゃんは黒のおかっぱ頭に浴衣という珍しい姿をしていた。たしかに“リサ”より“ヨシコ”の方がしっくりくるかもしれない。
 それから絹代によって強制的に話題が移り、当分はカレー講義を聞かされることになった。どこのメーカーにどんな特徴があるかだの、トッピングの王者はどれかだの、福神漬けはパンにはさんで食べてもいけるだの、そういった熱弁に相槌を打つのもそろそろ飽きてきたというころ、荘吾が話の種をお盆に載せて戻ってきた。
「お待たせしました、どうぞ召し上がれ」
 荘吾は3人の前に、カレー皿とスプーン、袋に入ったままのカレーとごはんを並べた。
「あれ? 湯浅のは?」
 荘吾を拍手で迎えていた絹代だったが、カレーが3人分しかないことを見咎めて驚きの声を上げた。荘吾はお盆に取り残されている、ラップに包まれた2つのおむすびを指し示した。
「俺はおべんとさん。あんまりゆっくりしてられないから、あとで食おうと思ってな。多分ナッちゃんも腹減ってるだろうから一緒に食べるつもり。ここのお菓子もちっともらってくけど、いいよな? それよりお3人さん、早くしないと冷めちゃうよ」
 そう急かされた絹代と亜央は、慌てて久方ぶりの食事を皿に盛り始めた。しかし美依はというと、すんなりとランチをいただく気分にはなれないのだった。
 なぜならごはんの封が切られているからだ。湯煎ではなく直接お湯を注ぐという性質上、袋が開いているのは当然だ。ただそれによって、お湯以外のものにも混入する機会が与えられてしまった。しかもそれを用意したのが、胸に一物も二物も抱えていそうな人物なのだ。調理の過程を見ていればよかったと美依は後悔した。
「西村ちゃん、まだ信用できない?」
 荘吾が美依の隣に腰掛け、穏やかに問いかける。全くもってそのとおりだが、ここで説得モードに突入されてはたまらないため、美依は首を横に振った。
「ちょっと食欲なくて」
 すると荘吾は、美依にあてがわれたごはんを皿に手早く移した。
「ほれ、少しでもいいから食べときな。元気出るよ」
 面倒なことに、食べるのを見届けるまでこの場を離れないつもりらしい。この厄介者に一秒でも早く出かけてほしい美依は、とりあえずカレーの中身をごはんの上に空けた。その際こっそりと確認してみたが、カレーの袋に穴が開いていたり、細工が施されていたりはしていないようだ。さらに念のため、すでに夢中で食事を始めている女の子たちに異変がないか窺った上で、危険性の高い白米には触れないよう、ルーだけを口に運んだ。
「……こんなにおいしいカレー、はじめてかも」
 実際には味をじっくり噛み締める余裕などなかったのだが、美依は声に感慨をこめた。
「よかった」荘吾は満足げに美依の頭をひとなでしたあと、ようやく出入り口へ向かった。「じゃあ俺、ちっと行ってくるわ」
「いってらっひゃーい」
 早くも最後の一口を頬張りながら絹代が言い、亜央がにこやかに手を振る。荘吾はピースサインを頭の上に掲げながら、やや急ぎ足で部屋を後にした。美依はそれで、ようやくほっとすることができたのだった。
「なんか、おなかいっぱいになったら眠くなってきちゃった。ちょっと寝てもいい?」
 放っておかれた美依のカレーをほとんど強引にもらい受け、それさえもあっという間に平らげた絹代が、あくびをしながら問うた。
「どうぞ」
 亜央は快く了承したが、絹代は答えを聞くより前に壁際のベッドへ直行していた。そして布団をかぶるや否や、大きな寝息をたてはじめた。
 元通りの気ままな傍観者に復帰するため、あとは“パニックを起こして逃走”という一芝居を打てばいい。そう考えていたが、監視の目がひとつになった今、はたしてそこまでの策を講じる必要があるのか疑問だった。美依はあれよあれよと好転していく事態に気をよくし、ついでに胸にこごっていた疑問を解決することにした。
「ねー、亜央ちゃん? なんで北須賀に会いたいの?」
 美依が尋ねると、亜央がスプーンをくわえたままの状態で動きを止めた。
「ほんとは、殺したいって思ってるんじゃないの?」
 大胆すぎるかと思ったが、じりじりすることにはもう飽き飽きだったため、あえて単刀直入に訊いた。当然のごとく、亜央はそのつぶらな目を見開く。
「どうして、知ってるの?」
 ずっと尾行してたからだよ、とはさすがに明かさなかった。
「だって北須賀だもん。殺すためじゃなかったらこんなときに会いたくないでしょ、あんな自己中なやつ」
 適当に理由をつけると、すんなり「そうね」と同意してくれた。
「殺したい理由は?」
 美依は亜央の隣へ移動し、質問を続けた。彼女は言おうか言うまいか迷っているようだったが、ベッドのほうを一瞥したのち、美依にそっと耳打ちした。
「高橋絹代さんが、好きなんだって」
「え?」
 その意外な回答に、理解がついていかなかった。北須賀祐を好きな女の子がいることにも驚きだが、突如現れた“好き”という単語は、この殺伐とした話題の中でひときわ異彩を放っていた。
「え、え? どういう意味?」
 美依がわからないというふうに頭を振ると、亜央は声のボリュームを最小限に絞った。
「北須賀祐くん、嫌われてるから。北須賀祐くんを恨んでる人に、すっごくすっごく、痛めつけられるかもしれないから。その前に、苦しまないように殺してあげたいって……」
 美依は唖然として、真っ白な羽毛布団からはみ出した後頭部を見た。恋は盲目というかなんというか、祐にしてみれば甚だありがた迷惑な話だ。しかし、祐がひどい拷問を受けかねないこともまた事実だった。能天気な言動の裏でそんな決意を固めていたのかと思うと、急に絹代のことがたくましく見えてきた。
「北須賀を殺したいって思ってるのは絹代ちゃんだけ? 亜央ちゃんはただ単に付き合ってあげてるだけ? それとも亜央ちゃんにも殺したい理由があるの?」
 すっかり調子付いた美依は、一気にまくし立てた。亜央はその勢いにゆっくりと目を瞬かせつつ、しかしなにやら悲しげに唇を噛み締めた。やがてまぶたを閉じ、深く首を垂れた。
 この様子からすると、案の定北須賀祐は彼女たちにとって共通の標的であるようだ。殺人計画の一切合財が明らかになるまであと一押しだろう。
「誰にも内緒にしとくから、教えてくれない?」
 そう頼んでみたものの、やはり躊躇があるのか、答えは返ってこない。しばらく待ってみたが、亜央はうんともすんとも言わなかった。
「亜央ちゃん?」
 俯いたままでいる亜央の顔を覗き込み、美依はそこではじめて、彼女が考えにふけっているのではないと知った。その目は固く閉じ、ぷっくりした唇は半ば開き、ウサギみたいなふたつ結びの頭はかすかに舟を漕いでいるではないか。
「ちょっと亜央ちゃん」
 肩をゆすり、ソファーの背もたれへ体を押し倒してみたが、彼女はただむにゃむにゃするだけだった。絹代と同じく満腹になったからか、疲れがとうとう頂点に達したのか。殺人計画の核心に迫りかけていただけに、質疑応答の中断は美依を失望させた。
 美依の母親は一度眠ってしまうと梃子でも動かなくなるのだが、亜央もそうなのかもしれない。考えながら、半分ほど残っている亜央のカレーに視線を落としたときだった。突如としてある疑念が頭に浮かび、美依の背筋を冷たいものが滑り落ちた。
 急いでベッドへ近づき、布団を思い切り引っ剥がす。名前を連呼し、頬を強めにはたいてもなお、絹代が起きることはなかった。
「……まさか、ね?」
 美依は顔が強張るのを感じながら、隣の部屋へ走った。
 “給湯室”と書かれたプレートが扉に貼られてはいるが、そこはダイニングと呼んでも差し支えないような広々とした空間だった。右手の壁一面にシステムキッチンが設けられ、左手には食器棚や冷蔵庫などが並んでいる。部屋の中央にある長机には、携帯用のガスコンロ、水の張られた手鍋、それに“しろめし”の袋が置き去りにされていた。
 この中身を使い、荘吾はおむすびを作ったのだろう。ごはんはパウチに2、3粒しか残されていなかったが、その代わり、小さくつぶされた青い箱が突っ込んであった。美依はそれを恐る恐る広げ、息を詰めた。
“睡眠改善薬”
 箱の中ほどに居座っていたその文字列が、美依の視界を席巻してやまなかった。
 それは、テレビCMでよく見かける市販の睡眠薬だった。絹代と亜央はこれによって眠らされたのに違いない。そして一歩踏み外せば、美依自身も同じ目に合っていたかもしれなかった。
 湯浅荘吾の片笑みが脳裏をよぎった瞬間、美依は衝動的に箱を床へ叩きつけた。自分でも不思議なくらい腹が立っている。荘吾が何のために薬を摂らせたのかわからないが、これが悪巧みでなくていったい何だというのだろう? 奴は甘い態度で安心感を植え付け、美依を、絹代を、亜央を、まんまと陥れたのだ。女の子たちの尊い殺人計画を、卑しくも踏みにじったのだ。――はなから信じてなかったけど、まさか本当にやるだなんて!
 気がつくと、美依は老人ホームを飛び出していた。湯浅荘吾と再会し、真意を正さなければならなかった。ナツキの元へ戻るなどというのも嘘かもしれなかったが、唯一の手がかりであるキャンプ場へ向け、美依は憤然と駆けはじめた。
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